石井 良明 (千葉県)
ろうあ者第1号フルマラソン:2時間37分57秒

史上初「ろうあのマラソン活躍」大手新聞で報道

 雨に煙る2日、別府市の別府毎日マラソンコースを“孤独のランナー”が52回目のマラソン出場を完走で飾った。

 幼いころから耳が不自由で、沿道の歓声も拍手も聞こえない孤独との闘い2時間49分7秒、186位。

 自己のベストより10分余遅れはしたが、ずぶぬれの全身で、この日を力いっぱい生きたことを確かめた。

 石井良明さん(31歳)スタートラインに並んだ386人の中でも164センチと“小兵”。


 昭和18年台湾で生まれた。2男2女の2男坊。

 満2歳の夏どこからともなく飛び込んできたハチの大群に体中を刺された。顔はふくれ上がり、高熱が続いた。

 生命は取り止めたものの耳と口が不自由に。日本に引き揚げ秋田、茨城と転居。

 茨城県立ろう学校を卒業、国立聴力言語障害センター弱電科を修了した1970年から千葉県の会社で半導体の組み立て作業をしている。独身。

 「30キロ地点を過ぎたあたりで寒気がし、ノドがかれた。血マメも破れて最高に苦しかった 」コースは晴天なら明るい別府湾が開けるところ。

 小雨とはいえ、風邪気味の体にはつらいが、がんばった。練習は1日20キロ。

 「ろう学校時代から走ることは好きだった。身障者体育大会には毎年出場、5000mでの優勝もある。

 長距離は自分を鍛え、生きていることを確かめる数少ない機会だ。黙々と練習を続けた。

 これまでのマラソン出場は5年間でこの日のゼッケンと同じ51回目。この日は52回目。

 別府マラソンは連続7回目。はじめの2回は足のツメをはがして途中で断念したが、あとは完走、ベスト記録は22回大会(1973年)の2時間37分57秒。

 ゴールの別府交通センター前。ほとんど並んで森田照男さん(31歳)=埼玉=もゴール。

 森田さんも耳や口が不自由、二人ともマラソンシューズに血をにじませていた。

 「40キロあたりで一諸になった。寒いけれどゴールまで走ろうと手話で励まし合ってきた」

 ゴール後、喜びを筆談で伝える石井さんは「一週間後の9日には京都マラソンに出場します」と書き加えた。


*毎日新聞の記事*(1975年2月3日)

 享年34歳


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